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執筆者の写真yasaka

不安病を断ち切るには!

 学校で1時間の授業の間に4、5回トイレに行く。帰宅後も15分おきくらいにトイレに行く。トイレの中で暮らしているんじゃないかというくらいです。これはある小学生に実際に起きた出来事です。

 こんな「漏らしたらどうしよう!」という不安ループに陥ったのは、おそらく学校でのある出来事でした。その子が小学校の校外学習で、バスで出かけることがありました。彼は学校にバスで帰る際、トイレに行かずに乗ってしまい、途中でトイレに行きたくなったのです。結局途中で担任の先生が運転手さんに頼んでコンビニに寄ってもらい事無きを得たのですが、学校に帰り着いてからその後、1時間の授業の間に4、5回もの頻度でトイレに行くようになったのです。帰宅後も15分おきにトイレに行く始末です。30分もてばいいという状態でした。

 お母さんは夜担任からの連絡で学校での様子を聞かされ、「家で今どうですか?」と尋ねられました。今もかなりの頻度でトイレに行っていると話し、翌日もこの調子だろうと本人も不安がっているので配慮してくださいと頼みました。そして何故こんなにトイレに対して不安が強まっているのかと思い、担任に詳しく話を聞くと、バスの中でトイレに行きたいと分かった時に、「早く言わないといけないでしょ!」とか「ちゃんとトイレに行っておかなきゃ!」とか先生が言ったそうなのです。先生ご自身もあんなに強く言わなきゃよかったと言っていました。

 とにかく、バスの中という特殊な状況、そして先生からの強い注意というきっかけで、トイレに対する不安ループが一時的に強まってしまったのかなと考えました。また、その晩その子は寝ている時に全くトイレに行かず朝まで寝ていたので、間違いなく強迫的な不安が原因でした。


 翌日子どもは学校にとりあえず行きましたが、状況は変わりません。その翌日も同様です。学校ではもちろん何も対応はしてくれず、ただいつでも好きにトイレに行かせてくれるだけです。このままだとずっとトイレで暮らす?!ことになるので、どうにかしないといけません。

 多分、カウンセラーが不安障害に対応するなら、「不安・ストレスを取り除く」とか言って内面に関わることを重視するでしょう。しかし、この場合ストレスはないのです。不安とは「漏らすかもしれない」という不安です。それを取り除くには「トイレに行く」ことしかありません。学校ではいつでもトイレに行かせてくれるので、ますますトイレに行くことを強化し、根本的な改善策は見えません。実態のよくわからない心に焦点を当てたところでどうしようもありません。こんな時、行動分析学では異なったアプローチをします。通常の生活を取り戻すために、不安を避けるのではなくむしろ避けられないようにするのです。詳しい話はここでは省きますが、エクスポージャーという技法が知られています。その子どものお宅で次のように対処しました。


 ❶「今から1時間トイレには行けません」と宣言しました。もし漏らしたとしてもこちらは全然構わないので、1時間我慢するように告げました。

 ❷子どもは1時間もじもじしながらも、トイレを我慢できました。そして褒めまくってトイレに行かせました。

 ❸次に「外食しに出かけるよ」と言って車に乗せました。本人は抵抗感がありましたが、漏らしても構わないと言い聞かせながら車に乗せて出かけました。帰宅するまでに1度もトイレに行かせることなく過ごしました。所要時間はもちろん1時間以上です。次のトイレまで時間を少しずつ伸ばしながら、繰り返し褒めていきました。

 ❹最後に我慢できたことを褒めまくりながら、一緒に振り返り確認をしました。ただの「思いこみ」「不安病」だったのだということをです。そして次の日から、トイレに頻繁に行くことはピタッと止まり、全く何事もなかったのように以前通りに過ごせるようになりました。

 

 実際にトイレに行かない時間が長かったのに漏らしたりしなかったので、トイレに頻繁に行く行動が弱まっていきました。何か不安になった時に、言葉であれこれ原因を考えてみたり不安を避けようとしてみても、解決できないことも多く、行動分析学で介入する方が現実的だと思うことがあります。特に幼い子どもは自分の頭の中を整理したり、自分の認知を客観的に見つめて言語化するなんてできません。行動に焦点を当てて行動を変えてやることで、内面も変化するという考え方もあるのです。

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